敏感と鈍感のあいだ
江國香織さんの小説『スイートリトルライズ』が映画化されました。
私、江國さんの作品は読んだことが無いんですが、多くの女性から
支持されている作家ということだけは存じ上げております。
では映画化されたものは、どんな感じ?スイートなの?
とても魅力的な一本でした(お二人とも、ファンなので…)。
●3月9日(火)放送:
テディベア作家の瑠璃子と、IT企業に勤める聡は、結婚3年目の夫婦。
洗練されたインテリアの部屋に住み、金銭的にも不自由なく、
誰から見ても幸せそうに見える二人。
ただ二人の繋がり方は、どこか妙。聡は帰宅してからの時間は、殆ど
部屋に篭ってTVゲームをしながら大音量で音楽をかけて過ごしている。
二人は同じ家に居ながら、連絡を取り合う手段は携帯電話だったりと、
仲が悪い訳ではないけれど、温かみを感じるものとは程遠い。
不幸ではないのに、日々どうしようもない淋しさに襲われる瑠璃子は、
「この家には、恋が足りないと思うの」と聡に告げる。「どうして?
そんなことないよ」と答える聡。
それからしばらくして、二人にはそれぞれ別の恋の相手が現れます。
“本当は、夫だけを愛していたいのに”瑠璃子はそんな複雑な思いを
抱えたまま、個展を訪れた春夫と恋に落ち、聡はサークルの同窓会で
久々に再会した、聡に積極的にアプローチしてくる後輩のしほと恋を
します。
*
ほぼ女性目線で語られるお話。瑠璃子の痛い位の淋しさが、細部の
映像にまで巧みに表現されています。ただ一針一針テディベアを
縫っているだけなのに、どうしようもない淋しさを夫にまっすぐ
ぶつけることができない瑠璃子のわだかまりと合わさって、何だか
怖い場面に見えてきたり…(可愛いベアが痛々しく感じられます)。
私は、個人的に聡の鈍感さにイラッときた場面がありました。
それは、聡が以前しほに紹介されて一緒に食事をしたレストランに
「同僚に教えてもらったんだ」と嘘をついて瑠璃子を連れて行く場面。
これは、しほも瑠璃子も、どっちも事実を知ったら愕然とするよね…。
細かい部分の表現が巧みで、思わずうなずいてしまうような映画。
中谷美紀さんの透明感あふれる繊細な美しさが映える作品でした。
愛が欲しくて、愛を与えたくて、でもどうしようもない人にとって、
心に響く映画ではないかと思います。
ソラリアシネマ、ユナイテッドシネマ福岡にて公開です。